奇跡とはまぐれではない。

ふたばが長田に見せてくれた奇跡の話。

 

その前に1つ。

奇跡とは偶然とかマグレとかたまたまではない。

奇蹟とは足掻いて足掻いて足掻いて勝ち取ったものである。

 

ふたばは薬学部志望である。普通の推薦入試なら志望理由書や活動報告書・面談で勝負なので、ふたばも都大会ベスト8などの実績があるので、十分に勝負できるのだが、薬学部の推薦入試は面談もあるけど、メインは英数化の筆記試験。そう一般入試と変わらない。

 

5月に柔道部を引退後、4時間授業で終わる火曜日を除いて平日の放課後、日曜日も夏休みも模試などがなければ、毎日学校で数学を教えた。さらに柔道部OBの「わたる」には英語、「なおのぶ」には化学の指導をしてもらった。まさに柔道部の総力戦である。

 

夏に志望校を決めたとき、長田は「まぁ、厳しいけど、全く無理な差ではないから受けてもいいよ」と言った気がする。うん、ずっとE判定だったからね。それぐらいのほうがモチベーションも上がるからね。ただ、結局最後までD判定さえ見ることができなかった。。。

 

夏休みもずっと頑張っていたけど、残念ながら届く気配がなく、たぶん1か月前に、「正直受からないと思うよ。だから奇跡を起こすしかないね。ということで足掻くぞ!!」と発言した。今思うとかなり厳しい言葉をかけたと思うけど、まぁ「ふたば」も負けず嫌いなので、家でも「私、今足掻いているから!」と家族に言っていたそうなので、ふたばには良い刺激になっていたと信じたい。

 

試験の合格最低点は350点中210点。調査書と面談で50点なので、ようは英数化が300点満点で180点とらないといけない。たぶん試験1か月前に過去問を解いたら英語30点、数学70点、化学40点で140点くらいだったんだよね・・・。

 

そこからは英単語と熟語をアプリでやり直させて、化学も「なおのぶ」が週2回来てくれて、ペースを上げた。そのころ、ふたばから「先生、私、夢でも勉強しているんです」と。。。かなり追い込まれていたと思う。

 

試験数日前にふたばが、「数学で9割を目指します」と発言した。

言いたいことは理解できる。300点満点で180点を獲得するためには、数学で稼ぐしかないからだ。正直、直前まで英語と化学は50点を超えることはなかった。そして、数学は時間さえあれば満点を取れる実力を有していたから。

ポイントは時間内。これはどの薬学部の説明会でも入試担当の人が言っていたが、「一般入試と比べれば簡単ですけど、量は多いです。」とのこと。実際にふたばに数学を教えていても「全部解けるけど、時間が足りないんだよね~」という印象だった。だからこその上記の発言だったと思う。

が、長田はこう言い返した。

「そうやって、自分に縛りをかけると、1問しかミスできないとかプレッシャーになって、焦ってミスをするからやめておけ。それよりもベストを尽くせ。解ける問題を確実に解け。」とまぁ、言い方変えただけでふたばと同じことを言っているんだけどね。。。

試験翌日、報告を聞くと
「数学は1問だけ数列の問題が解けなくはないけど、時間かかりそうだし、計算ミスをしちゃいそうなので、飛ばしました。だけど、そのおかげでそれ以外は最後まで解けました」とのこと。おぉ9割取ったよ!!

 

そして英語も「先生、named afterは絶対に正解しています」とのこと。ふたばの自己申告の話を聞きながら、数学90点、英語40点、化学50点ぐらいと推測。なんとか180点に届いた!!

ということで、合格の可能性はあった。だけど、数学は計算ミスもあるから、ギリギリで不合格だろうと一般入試の準備を開始した。それはふたばもよく分かっていただろう。

そして、合格発表日。昼休みに合格発表があるのは知っていたが、まぁ無理だろうと思っていて、ふたばの一般受験はどこを受けさせようかな~なんて受験雑誌をめくっていたら、ふたばが息を切らして職員室に現れて一言。

 

「長田先生、合格しました!」

と。

いやぁ、頑張った甲斐があった。

最後の最後まで足掻いて足掻いて足掻いて足掻いて足掻きまくった甲斐があったよ。

 

薬学部なので、ふたばにとってはこれから6年間も勝負なんだけど、まず夢のスタートラインに立たせることが出来たのは、教師としてこれ以上ない喜びである。

 

 

 

 

 

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