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今月はコチラです!
免疫力 – 正しく知って、正しく整える – (ワニブックスPLUS新書)
- 作者: 藤田 紘一郎
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2020/06/09
- メディア: 新書
風邪で発熱するのは、獲得免疫が働いている証
では、ここでもう一度、風邪を引いたときの免疫の働きについて話を戻します。風邪を引いたときの獲得免疫の働きを見ていくためです。
風邪のウイルスに感染して獲得免疫が働くのは、症状が出始めてからです。獲得免疫は敵となるウイルスの性質を学習し、記憶してから働きだす免疫チームだからです。獲得免疫の主役はリンパ球のT細胞(ヘルパーT細胞、キラーT細胞)とB細胞であることはお話しました。
自然免疫チームのマクロファージが風邪のウイルスを食べると、免疫システムの司令塔であるヘルパーT細胞にウイルスの侵入があったことが知らされます。敵の情報を受け取って戦略を立てたヘルパーT細胞は、殺し屋であるキラーT細胞に命令を出し、ウイルスと闘わせます。同時に、B細胞へウイルスに対抗する抗体を作るように指令を出します。
そうして獲得免疫は、ウイルスに感染されてしまった細胞もろとも、強い攻撃力によってどんどん破壊していきます。破壊された細胞では、炎症が起こります。その細胞からはサイトカインなどの化学物質が放出され、免疫細胞たちに感染の現場に集まってくるよう助けが求められるのです。
また、サイトカインには、脳の細胞の中で、「プロスタグランジン」という発熱の情報を伝える物質を作らせる作用があります。これが発熱中枢を刺激します。すると、皮膚の血管が収縮して汗腺を閉じ、熱の拡散を抑えます。そうして体温を上げることで、免疫細胞の働きをより強めているのです。
免疫学の世界的権威だった故安保徹先生(新潟大学名誉教授)は「体温が一度上がると、免疫機能が30パーセント上昇する」と言っています。体内で増殖したウイルスを倒すには、発熱によって体温を上げて免疫細胞の働きを強める必要があるのです。
ちなみに、私たちの体内では日々たくさんのがん細胞が発生していることをお話しました。そのがん細胞も、体温が39度を超すと死滅するとされています。多くの人は風邪で発熱することを恐れます。ですが、ときには風邪をひいて高熱を出すのは、がん予防においても良いことなのです。
なお、熱の上がり始めには、寒気がするでしょう。これも重要な免疫反応の1つです。悪寒がするとき、身体は筋肉を震えさせて体温を上げる手助けをしているのです。このように獲得免疫では、担当する細胞たちが互いに協力し合い、体内の反応を上手に活用しながら、感染した細胞もろともウイルスを破壊していくことで、風邪を治していっているのです。
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