英語と国語は言語

(学年通信のコラムをそのまま転載しているので、分かりにくいところが多々あると思います。)

 

君たちが生まれてから泣き声や笑い声を除いて、最初に発した言葉は何だろうか。私は独身なので、赤ん坊が最初に発した言葉なんて知る由もないのだが、なんとなく想像はつく。

「ママ」か「パパ」だろう。保護者が自分たちのことを呼んでほしくて、君たちの前で「パパ」とか「ママ」って声掛けをしていることが容易に想像がつく。

 

いやいや、「わが家は違いますよ」とか正解が何であるかを確認したいわけではない。その最初に発した言葉はどのように獲得したのだろうか。まさか、親が「いいか、『パ』を発音するときはまず唇をくっつけて、その後に大きく開くんだ!分かったか?」なんてことは絶対になく、赤ん坊はその言動を真似して、最初は失敗するけど何度も試行錯誤して、発音の仕方をマスターしていくのだ。

 

これは、君たちが日頃用いている言語も同様だ。私はここ5年間ほどTVを見ていない、というかTVを持っていないので、最近の若者の言葉を知らないのだが、多くの人がTVで芸能人が使っている言葉などを真似して使っている。実は言葉の意味が分からなくてもとりあえず使っているケースもあるだろう。使いながら、その言葉の意味を推測し、どのようなタイミングで発すればいいかを学んでいく。

そう、言語とは使って覚えていくものなのだ。理論や意味はあとからついてくる。

 

これは、私が3者面談でよく用いる十八番、

 

問 listen (   ) the radio

このカッコに入る前置詞を答えなさい。

 

1人だけcarafullyと答えたが、その生徒を除いて皆toと答えた。何故toだか理由を説明できるだろうか。そしてlistenと同じ「きく」でも hear の後にtoが続かない、つまり、hear toという表現がないことも皆知っている。多くの人がhearのあとはfromかofをイメージすると思う。その理由を説明できる人はどれだけいるのだろうか。

 

正解をいうと、listenが「聴く」なので、耳を傾ける意味が入っている。よって耳を傾ける方向を示すtoが続くのだ。しかし、hear は「聞こえる」であり、「自然と耳に入ってくる」なので to を用いることはない。それよりもどこから聞こえるのfromや聞こえた内容の of を用いるケースが多い。

なぁ~んてことを知らなくたって、使えればいいと思わないか?

これを日本語に置き換えると

 

問 私は数学(  )勉強している。

① が   ② へ   ③ と   ④ も

このカッコに入る助詞を①~④の中から最も適切なものを選びなさい。

 

たぶん、皆が真っ先に思いつくのは【を】だろう。しかし、選択肢にはない。ということで、一応意味が通る④を選ぶと思う。さて、①から③が間違いな理由を答えられるだろうか。たぶん多くの生徒が「①から③だと意味がおかしくなるから」と答えるだろう。まぁそれしかないと思う。

 

よく帰国子女の生徒が文法・語法問題を解けるけれど、友達に解説できないというケースがある。それは決して「友達に教えたくない」からではなく、「だって、この表現よく使うじゃん」や「他の選択肢は明らかにおかしいでしょ」という、この助詞と同じ感覚なのだということを、理解してもらえたら有難い。

 

言語とは使って覚えるものなのだ。使って使って使って感覚で理解する。使っていくと不自然なものには違和感が出てくる。それを修正しながらマスターしていくのである。英語の先生がよく「音読をしましょう」と言うが、音読することによって、感覚で覚えていくことが大事だということを示唆しているのだ。

 

また、本をよく読む生徒が国語が出来るというのも同様で、普段から長文を読み慣れているというのもあるし、読書で言葉を獲得しているというのもある。女子のほうが男子よりも言語系の科目を得意とするのも、会話を用いて言語を使い、語彙力を高めている機会が多いからである。

 

だから、言語が苦手な生徒は、①音読をする。②文章を書く。③本を読む。④言葉を聞く

という、よく言われる4技能を意識することを勧める。簡単なところで言えばTVのニュースを見ながら家族と会話する、読書をすることからだろう。友達とのSNSでの会話では限られた言葉しか使わないので、まず上達することはない。

 

10年前に国立の長崎大学に進学した生徒は、政経倫理を楽修したのち、その日に学んだ内容を両親に語ったそうだ。これによって自分が理解した内容がきちんと咀嚼できているか確認したと言っていた。これも良い楽修方法である。

 

どうでもいい話だが、私は君達の大多数にまだ英語で勝つ自信がある。それは受験勉強を経験して身につけたからだ。しかし、リスニングは全く勝てる気がしない。校内の実力テストのときに試験監督で一緒にリスニングを聞いているが全くわからない。それは昔のセンター試験にはリスニングがなく、私はリスニングの訓練を積んでいない、つまり英語を聴く回数が少なかったからである。言語は慣れることによって上達する科目なのだ。

 

受験報告談。1の生徒は甲子園の東京都予選が終わった夏休みの下旬に3者面談をした。その時期、得意科目の数学と理科は問題なかったのだが、英語と国語が低迷していて、正直国立は地方しか行けないなと思っていた。ただ、それでも本人は一所懸命に頑張ると宣言したので、「英語と国語は毎日1日1題やりなさい。最初に始めるときのレベルはなんでもいい。言語は慣れるものだから。」とアドバイスした。そうしたら、本当に毎日1日1題は自分にノルマを課して凡事徹底してくれた。本人も書いているが成果が表れるのに3か月かかかるものである。

 

話が脱線するが、生物か生物基礎で動的平衡を習っているだろうか。それは諸行無常というか、常に身体は新陳代謝を繰り返して、自分の身体は昔の身体ではないのだ。つまり、体は入れ替わっている。(本を読んで学んだだけなので間違っていたら許してほしい。詳しくは椎名先生と横井先生に聴くこと)その身体が完全に入れ替わるのに3か月くらいかかるそうだ。

 

だから、楽修の成果は3か月かかると思いながら凡事徹底である。ただ、上にも書いたが、どうしても机に向かって長時間、教科書を読んだり、問題を解いたりできない人は、言語の場合は使うことが大事なので、例えば洋画を字幕なしで見る、洋楽を歌詞を追いながら歌う、新書を読む、池上彰の番組を見ながら家族と会話するでもいいだろう。まずは楽修時間を増やすためにも、言語を触れる時間を増やす工夫をしてほしい。

 

また、古文、漢文、英文に関して音読は本当に重要だ。もちろん目で追って読むのが悪いわけではないが、音読をすることによって、なんとなく、慣用表現が頭に入ってくる。「意味はわかないけど、こんな表現使ったことあるな~」という知識が獲得できる。「そんなのでいいんですか?」と疑問に思う人、この学年通信をもう1回最初から読み直しなさい。最初に書いてある内容が頭から抜け落ちている。もっと脳内の器を広げるように努めよう

コメントは停止中ですが、トラックバックとピンバックは受け付けています。