教育の最上位の目的は

今月はこの本のコラムを取り上げて

長田が思うことをつらつらと

学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか (講談社現代新書)

学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか (講談社現代新書)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2021/08/18
  • メディア: Kindle版

教育の最上位の目的は

鴻上:工藤さんが根本的に目指しているところと、僕が目指しているものと、すごく似ているように思うんです。僕は学校と社会がシームレスに繋がっていくべきだと考えているのですが、工藤さんもまた、自律的に考える子供たちを育てたいと考えている。

 

工藤;はい、これまでの話の中でも使ってきましたが、自律とは、「自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する」ことです。AIをはじめとする科学技術が進展し、経済構造が大きく変化した現在、これまでの常識が通用しなくなっている。だからこそ、いままで以上に自ら考えて行動のできる人が求められるようになっています。ところが、これまでの日本の学校は、自律を育むどころか、逆のことをしてしまっていました。

私は「自立」という言葉ではなく、「自律」という字を当てています。それは、自ら考え、行動するためには、感情も含めて自らをコントロールすることが必要と考えるからです。問題が起きたときに、誰かのせいにしてしまっていては、自ら考えることはできません。「自分ごと」として考えなくてはならないのです。

 

鴻上:などほど。「自律」ですね。僕は、子育ての目的は「子どもを守り育てる」ことではなく、「健康的に自立させること」と言っているんですが、その意味は、工藤さんの「自律」ととても似ていると思います。ですから、僕は「自立」という言葉を使いますが、はっきりしていることは、「自律」および「健康的に自立」のためには、教員もまた、自分の頭で考える能力が必要だということですね。

 

工藤:日本の学校教育って明治以降に制度化されましたが、当初は国民ン位学問を与えて国を豊かにし、兵力も強化して他国と渡り合える国にしようと、そうした目的があったわけです。この発想がいまだに残っているような気がしてなりません。いうなれば、富国強兵のための教育。そこには個人の自律とか、多様性みたいな考え方が優先されている空気が感じられません。

 

鴻上:教育は国家に従属するものでしたからね。突出した個人を生み出すものでもなければ、弱い立場にある人を救い出すためのものでもなかった。

 

工藤:しかし、いまは、国が豊かさだけを追究すればいいのだという時代ではなくなりました。それがSDGsの考え方ですよね。早い話、人間が勝手なことをやっていたら人類が滅んじゃうかもしれないということです。教育もそうした流れの中で新たに語られるべきものだと思います。

 

鴻上:だからこそ、麹町中は子どもの「自律」を目指した。宿題や定期テストの廃止も、頭髪や服装の指導をやめたことも、そして教科書を使わないこともけっして奇をてらったものではなく、「自律」を促すためにはどうしても必要だったということですね。

 

工藤:まさにその通りです。子どもはもともと主体的な生き物なのですから、当事者意識のない大人が一方的に物事を押し付けてしまえば、子どもの自律を奪うことになってしまいます。教育の最上位の目的を失ってはいけません。

いま、学校教育の目的というのは大きく分けて2つあると思うんです。

1つは個人のウェルビーイング。そしてもう1つは社会のウェルビーイングです。社会が持続可能になって、どんな障がいのある子どもでも社会の中でよりよく生きていけるようにすること。子どもも社会も、ともに幸せなかたちを目指すべきで、それを実現させるために必要なのが、自律を促す教育であり、多様性を受け入れる教育です。鴻上さんも多様性につちえ言及されれること多いですよね。

 

鴻上:はい。多様性ってしんどいものだということです。

 

工藤:僕もまったく同じことを言っています。みんな違ってみんないい、みたいなことを気楽に話す人も少なくないのですが、それって本当に苦しいものです。

 

鴻上:苦しいですよ。ほんとうにそうです。

 

工藤:人間なんてみんな違うし、だからこそ、対立が起きるのも当然だと教える。協調性も重視されなくていいし、みんな仲良くしなくてもいい。「絆」とか「心をひとつに」なんてのも、無理矢理押し付けるものじゃない。それぞれの違いを乗り越えていくために、どうしたらいいか。それを教えるのが教員の役目だと思っています。

 

 

 

長田は「やればできるんだ」ということを教えるために、数学を教えています。そして担任をしています。これも自律だと思います。軍隊式を否定することはないです。これにも良さはありますからね。ただ、時代が変わっているのだから、その時代に即した人間教育をしていく必要があります。

 

協調性とかって難しいですよね。お互いを認め合い、受け入れる。とても難しいことです。そんな時代をこれから生きている若者の教育。そんな仕事に携わっているからこそ、もっと自分自身が学んでいかないといけないって思います。

 

 

 

 

 

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