やる気スイッチ

よく、三者面談や懇親会で保護者の方から「うちの子のやる気スイッチはどこにあるんでしょうか? 先生、押してください」と(たぶん冗談で)頼まれる。実際のところ、やる気スイッチはどこにあるのだろうか。

 

 

まず、数Aの授業で楽修した集合で考えたい。「やる気」という集合があったとき、補集合は「やる気が無い」になる。また、「やる」というのは、「行動する」ことなので、「行動する気が無い」ということだ。言い換えれば、「無気力」ということになる。何故無気力なのだろうか。色々な解釈があるが、ここでは「やったって意味がない」、「どうせ、失敗するから」、「このままで十分に満足している」としておく。そう考えると「無気力」の補集合である「やる気」が何なのかが分かる。

 

 

「やる気」とは「勇気」のことだ。

 

 

クラブ活動に例えるのが分かりやすい。多くの人にとって練習は辛いものだ。失敗したら先生に叱られたり、仲間から冷めた目で見られたりする。うまくいかなければ、たまには休みたいって思うものだ。それでも毎日頑張れるのは、上手くなりたい、試合に勝ちたい、仲間も頑張っているのに自分だけ休むなんて……、という気持ちで勇気を振り絞っているからである。

 

 

以前、仲の良い先生から留年すれすれの生徒をなんとか進級させてほしいと頼まれて追試の勉強をみてあげたことがあった。勉強を始めて10分くらいしたら、「先生、なんで勉強しなくちゃいけないの?」と質問してくるので、「高校は義務教育じゃないから別にしなくていいよ。退学届を持ってくるね」と切り返した。すると「学校辞めたら、友達と遊べないから嫌だ」というので、「じゃあ、友達と楽しい学校生活を送るために勇気を出して勉強しようか」と話した。すると「はーい……」と言ってプリントの暗記を開始したが、20分ぐらいすると再び「先生、なんで勉強しなくちゃ……」、こんな会話を1日10回くらい反復したことがあった。

 

 

やりたくないことや失敗する可能性があるものをするのには勇気が必要だ。恋愛の告白なんかもやっぱり勇気を必要としている。こういう話をすると生徒から「先生、僕は志望校に合格したいと思っていますけど、なかなか勉強できないです。それも勇気なんですか?」と聞かれる。

 

 

実はこれも勇気だ。どんな勇気かというと、現状の生活を変える勇気だ。そう、今の安定した生活を変えなければいけないことを恐れているのだ。1日24時間は誰にでも平等に与えられている。受験楽修の時間を作るということは、他の何かの時間を削るのと同値である。習慣になっている現在の時間と受験楽修をする未来の時間を交換する勇気がないのだ。

 

 

今、世の中の多くの会社がブラックだと言われている。それが分かっているならその会社を辞めて新しいホワイトな会社に転職すればいいだけの話だが、それを実行できない社会人は多い。それは転職先もブラックだったらどうしようとか、そもそも面接で落ち続けて無職になったらどうしようとか考えて勇気を出せないからにほかならない。

 

 

君たちの楽修する勇気に話を戻そう。定期試験前なら活動停止になっている部活動の時間や睡眠時間を削ればなんとか凌げるが、受験楽修となると、YouTubeやTwitter、Instagramなどスマホの時間、お笑い番組、ドラマなどのTVの時間を削らないと志望校合格は叶わない。君たちにはそれらの娯楽の時間を削る勇気がないのだ。是非、本当に第一志望校に向けて頑張りたいと思っているなら、勇気を振り絞って、したい(want)ことからするべき(shuold)ことへ、時間を交換してほしい。

 

 

さて、やる気スイッチの場所だが、勇気なので間違いなく心の中にある。しかし、保護者の皆様に伝えておきたいのは、「やる気スイッチは押すものではない」という事実。押すと心の中にどんどん埋もれてしまう。やる気スイッチは引き出すか掘り起こしてあげないといけない。

 

 

よく、「愛はお金で買えない」と言うが、勇気もお金で買えない。お金をもらえるから頑張るということはあっても、「お金を出すから勇気を売ってください」なんてことはありえない。何故なら勇気とはすでに心の内側に存在していて、あとは勇気を振り絞る(引き出す)だけだからだ。

 

 

ではどうやって勇気を振り絞る(引き出す)かというと、キーワードは「ワクワク」。皆は、「ワクワク」を漢字で書けるか? 私も調べたのだが、載っていなかったので、勝手にこじつけた(苦笑)。

「ワクワク」とは「湧く・沸く」

で湧き上がってくるものなのだ。そう、沸騰した液体が気体(期待)となって湧き上がってくる状況だ。そういう状態こそがやる気スイッチが入った状態なのだ。

 

 

つまり、受験楽修のやる気はワクワクするものではないといけないのだ。「慶應大学に入って就職活動を楽にしたい」でも「東大に入って、みんなから尊敬の眼差しで見られたい」なんて心でもいいだろう。純粋に興味有る学問を研究したい好奇心でもありだ。もちろん、みんな頑張っているから私も頑張ろうでもいいだろう。あまり勧められないが、御褒美がもらえないと勇気を出せないなら、親と交渉するのもありだと考える。

 

 

これは保護者や教員も気をつけなければならないが、「勉強しなさい」と押すのではなく「楽修をすると、こんな楽しいことが待っている」と生徒の勇気を湧き出させる方向で会話をしていかないといけない。そういう意味で褒めることを忘れてはいけないし、自分自身が子供の憧れとなる行動をとらなければいけないだろう。

 

 

やる気は勇気。自分の夢を叶えるためにワクワクしながら勇気を持って頑張ってもらいたい。

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