ラブレター

(学年通信に掲載したコラムをそのまま掲載しています。つまり手抜きです。)

夏休みになって推薦入試の準備が始まった。何名かの志望理由書を読んでいる。褒めて伸ばすことも大事だと思っているが、間違っているものはきちんと間違っているということも大事なので、情熱を込めてコメントしている。

志望理由書を書くときに一所懸命に自己アピールをしている生徒がいる。初心者にありがちなことだ。きっと推薦入試は学校の勉強では測れない情熱をPRするところと勘違いしているからだろう。

そういう生徒に伝えるのが、「ラブレターのつもりで書きなさい」ということ。自分をアピールをするのは構わないが、それが相手にとって嬉しいことかどうかは分からない。もしかしたら単なる自己満足かもしれない。よって、大事なのはどれだけ自分が貴学に相応しい人間かをアピールすることだよって。だから志望校がどんな学生を望んでいるかをパンフレットのアドミッションポリシーを読みながらそれに合わせて自分のアピールできるところを探していくんだ。

また外見(パンフレットやHP)だけでなく、中身(OC、研究内容)もきちんと褒めよう。誰でも知っていることだけでなく、君しか知らないことを伝えるんだ。そのためにOCなどでは、教授や先輩にどんどん質問していこう。また、大学の教授の本を読むことも大切だと思うし、研究発表などには参加するべきだろう。相手のために自分の時間を費やすんだ。そういうところに相手は惹かれるんじゃないかな?仕方のないことだが、独りよがりな志望理由書になっているケースは多い。

以下は、3年前に都内の国立大学を受験した志望理由書だ。

 

 現代の生活はAIの発展により翻訳や画像認識など、とても便利になった。将来は家にいるだけで観光地の映像を立体的に鑑賞できたり、野生にいる危険な動物の触れ合いができる世の中になるだろう。そんな仮想空間の実現に向けて自分自身の力を寄与したい。

 貴学は研究力が非常に高い。更に少人数教育を行っていて研究に没頭する環境が整っている。高校2年のときオープンキャンパスでK教授の研究公開を傍聴して以来、貴学への進学の思いは募るばかりである。私自身一番興味あるのはポジェットハンドをはじめとする触覚の部分である。現在は脳波の刺激で障碍者の義手が握る・放すなどのところまで到達したと聞いた。貴学の素晴らしい教授陣の下で自身の力を伸ばしていきたい。貴学では重量感や抵抗感などの感覚をよりリアルに伝える研究に勤しみたい。

 このような開発を行う上で、一番大切なのは問題発見能力と解決能力であると考える。実験はトライ&エラーの繰り返しである。視野が狭かったり、一つのことにこだわりすぎるとなかなか正解にたどり着けない。本質を見極め、そこに到達するためのプロセスを想像することが大切だが、私はその能力が秀でている。高校時代、学級委員は務めていないが、文化祭などでは周囲からアドバイスを求められる機会が多く、それに対して適切なアドバイスができたと思う。高校2年の文化祭では担任の意向により鉄パイプを用いて教室の中に敷居を用いることになった。皆設計に苦しんでいたので、私が「まず、自分たちが作業する導線を考えてから部屋の大きさを考えればいいのでは?」と一番大事なのかは何 かを意識したアドバイスをした。

 しかしながら、パソコンを扱う技術はまだまだ未熟で情報工学に関する知識も乏しいので、貴学に進学できたならば、座学を中心に知識を貪欲に吸収し、専門技術を学び研究につなげたい。

 以上より貴学への進学を志望する。

 

この志望理由書はたしか自分の長所と短所を踏まえながら書くことになっていたと記憶している。そこで本当に自身の長所を書くのではなく、大学で研究していくうえで必要な能力を私は持っている、というアピールをした。志望理由書を書く上で何かのヒントになれば幸いである。

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