アンチ

今月の3の日はこの本のコラムでも

俺しかいない【Kindle限定版】 (WPB eBooks)

俺しかいない【Kindle限定版】 (WPB eBooks)

  • 作者: 堂安律
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2023/03/23
  • メディア: Kindle版

アンチ

『俺を批判している人たちを全員、大ファンにさせてやる!』という強烈なモチベーションが、今日も俺を突き動かしている

 

20歳で日本代表に選ばれてから、注目度や知名度が一気に上がった。日本代表初ゴールを決めたころは称賛や期待の声が大きかったけど、チームを優勝させることができなかったアジア杯以降は強烈なバッシングを浴びた。日本代表の影響力はすさまじく、「なんで堂安を出すんだ」「堂安のどこがいいんだ」というアンチの声が嫌でも俺の耳に入ってきた。

 

あの当時、日本代表のなかで俺が圧倒的に嫌われていた。それは間違いない。チームが負けたら「堂安のせい」「堂安はいらん」と言われたし、コンディション不良でシュートをあまり打てなかったとき、他の選手なら「普通だった」と言われるけど、俺は「全然ダメだった」と言われてしまった。

 

 

結果を出しても「どうせ、まぐれだろ」と反応され、「はあ?」と反発したくなることもあった。でも、経験を重ねるうちに、次第にどっしり構えられるようになった。自分が思ってもいないようなことを言われた方が発見もあって面白いし、毎回正しい評価をされるほうがつらい。批判の声を、奮起のためのエネルギーに変えられるようになっていった。

でも、結果はなかなか出ない。結局カタールW杯まで3年10か月も日本代表ではゴールを決められなかった。コロナによって代表活動が行われなかった期間もあるとはいえ、あまりにも長い。所属クラブで好調でも、日本代表では思うようなパフォーマンスを発揮できない時期が続いた。

 

日本代表で先発から外れ、出場機会が減ってくると批判の声は聞こえなくなってきた。所属クラブで活躍しても話題にすらならないことが増えた。そのおかげでプレッシャーから解放され、リラックスしてのびのびとプレーできるようになり、自分を見つめ直すこともできた。一方でこんな思いも抱いていた。

 

「ああ、今の俺は誰からも期待されていないんだな……」

 

若くして日本代表の一員になり、過度に期待値が上がってしまったことでたくさん批判された。でも、それは全部、自分の責任だ。その大きな期待に応えることができなかった俺が悪い。自分にものすごく腹が立った。俺の性格上、批判してくれたり、叩いてくれたりする人がおかげで、モチベーションを高く持ち続けられる。アンチの批判が、俺を奮い立たせてくれる大きな材料なんだ。

 

批判は期待の裏返し、アンチはファン---。 誰にも期待されず、批判もされず、関心も持たれないことが一番つらい。身をもって実感した。プロサッカー選手として、アスリートとして、エンターテイナーとして、「俺を批判している人たちを全員、大ファンにさせてやる!」という強烈なモチベーションが、今日も突き動かしている。

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