思い通りならないことは幸せ

今日はこの本のコラムから

「叱らない」が子どもを苦しめる (ちくまプリマー新書)

「叱らない」が子どもを苦しめる (ちくまプリマー新書)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2024/02/08
  • メディア: Kindle版

思い通りにならないことに耐えられない子どもたち

最近の、学校で現れる子供たちの不適応の特徴の1つとして、「思い通りにならないことに耐えられない」ということがあります。

これだけではわかりにくいと思いますから、いくつか例を示しましょう。

 

【事例1:授業時間が長いから学校に行かない】

小学校1年生の男子。小学校入学後しばらくしてから登校を渋るようになる。理由は「授業時間が長いから」と話す。学校としては、親に送り出してほしいという思いはあるが、「本人が嫌がるので」と親は子どもに言われるがままである。五月雨式の登校は続き、学年が上がってもその傾向は変わらず、もともと学力には問題がなかったにも関わらず、徐々に学力の低下が起こり、それがまた登校の難しさに繋がるという悪循環になっている。

 

【事例2:都合が悪い状況で「いじめ」と主張する男子】

小学校4年生の男子。同級生とのやりとりで自分の要求が通らない状況や否定的な場面で「いじめられた」と主張する。例えば、自分がやりたい遊びができないとき、ドッジボールで当てられらたときなどにそういった発言が見られる。親は男子がいじめられていると考え、対応や謝罪を学校に要求する。

 

この2つの事例の印象は随分異なるものだと思いますが、共通しているのは「思い通りにならない場面」に対して不満や拒否感を抱えているということです。事例2の「やりたい遊びができない」などの「思い通りにならない場面」は、学校をはじめとした社会的な場で活動する上では避けられないものですが、近年、増加している不登校や学校で不適応をしめす子どもたちの中には、こうした状況に対する拒否感が中核になっている場合があるのです。

どうして彼らはここまで「思い通りにならない場面」に対して不快を覚えてしまうのでしょうか?

 

子どもが生まれてから一歳くらいまでは、外の世界とあまり積極的に関わることはせう、親子はべったりとした関係性の中で過ごすことになります。この間、子どもは親から大切にされることで基本的信頼感(世界に対して安心できるという実感)を育むと同時に、こどもの行い1つひとつに親が反応し、対応することで、能動的な力の感覚(積極的に世界に働きかけていく力。自信の萌芽でもある)を身につけていきます。

子どもが1歳を過ぎるころには、歩けるようになるなどの身体的発達が見られるようになります。こうした身体的発達に、基本的信頼感や能動性の高まりが加わることで、「安全な親から離れて、外の世界に働きかけても大丈夫」という安心感を持って、「外の世界」と関わるようになります。

このように、1歳を過ぎたあたりから、子どもは「外の世界」と本格的に関わり始めるわけですが、まだまだ分別がつかない子どもですから、やってはいけないことをたくさんやってしまいます。回っている扇風機に指を突っ込もうとしたり、階段から落ちそうになったり、高いところに登ろうとしたり、とにかく親がハラハラしたり、ビックリするようなことを平気でします。

こういうことを子どもがやりそうになったときに、親を中心とした「外の世界」に求められるのは、子どもの行動に対して適切に「押し返す」ということです。この「世界から押し返される」とは簡単に言えば、叱られる、止められる、諫められるといったことになります。

現代の世の中には「自由にさせてあげた方が良い」「叱るのは可哀相」という風潮があることは承知していますが、適切に叱られる、止められる、諫められることによってもたらされる「子どものこころの成熟」も理解しておいてほしいと切に願っています。

こどもが社会的な存在として成熟していくためには、こうした「世界からの押し返し」を経て、現実に合わせて自分を調整するという経験が絶対に必要なのです。

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学校に合わせられない生徒が増えてきていますよね。逆に学校ってそういうところなの? という意見もあると思いますが、「社会に出る」ということが「他者と協働する」世の中である限り、それは最低限必要なことであると思います。

結局のところ自己肯定感を高めるというのは他者から評価されることであり、他人に貢献することだと思います。いや、テストで良い点を取るとか給料をたくさんもらえるという数値化でもいいんですけど、それは他者との比較であり、ずっと比較され続けるのも大変な人生ですよね~。

まぁ、思い通りになった方が楽なので、それを追求するのもありですが、個人的にはすべてが思い通りになることって退屈な人生だなと思います。思い通りにならないから努力をするのだし、その過程で他者からのサポートを感謝することができるなど、得るものが大きいです。

っていうことを小学生が理解するのも難しいし、最近は高校生や大学生でも理解にしにくい世の中になりつつあります。もちろん社会人になってもなかなか難しいですし、そういう人生を送らないのもありだと思います。

それでも、思い通りにならないから、得られる幸せな事ってたくさんあるので、その苦行を楽しめるといいですね。

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