私の座右の書のコラムを数回に分けて紹介します。
気に入った方は是非、購入して手元に置いてほしいです。
- 作者: 山下 泰裕
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2009/11/26
- メディア: 単行本
戦い方は2つしかない
どんな勝負も突き詰めれば、最後は自分との戦いです。「相手に勝ちたい、勝たなくては」という気持ちが強すぎると、自分で自分に金縛りをかけてしまって自滅します。
その点、北京五輪の柔道男子100キロ超級で金メダルに輝いた石井慧選手が見せた戦いぶりは、21歳の若者とは思えないほど老獪なものでした。
準決勝で戦ったグルジアの選手と決勝で戦ったウズベキスタンの選手は、いわゆる「一発がある」選手でした。すなわち、一瞬で対戦相手を畳みにたたきつける必殺技を持っていた。彼らの好きな組手や間合いなど、向こうにとって「いい形」になってしまったら最後、確実に一本を取られてしまう。そんな怖さのある相手でした。だが、石井は最初から最後まで「いい形」を取らせず、得意技を封じてしまいました。
これは並大抵のことではありません。というのも、相手の「いい形」は一人ひとり違います。石井は、事前にライバルと目される世界の有力選手のすべてについてビデオなどで研究し、自分の取るべき策を用意していたはずです。
石井は「練習の虫」として知られていました。特に私が彼について感心するのは、対戦相手を徹底して研究していたことです。彼自身、「自分の努力とは単純なけいこ量だけではない、己の頭脳を駆使した創意工夫もあるのだ」という自負を持っているのでしょう。
石井がこの大会で魅せた「相手の技を封じる」戦い方は、本来、経験が生きるベテラン向きのものです。にもかかわらず、まだ若い彼が、この戦い方を選んだ理由を考えるに、自分の実力に対する冷静な自覚と強烈な勝利への執念が共存していたのではないかと思います。
対戦競技の勝ち方は、突き詰めれば2つしかありません。第一に、自分の実力を出し切ること。第二に、相手に実力を出させないこと。
北京五輪での優勝を目指すにあたって、石井が自分の現状を客観的に分析したとき、「自分の実力を出し切る」だけでは不安が残ると感じたのでしょう。それでも「絶対に勝ちたい」と考えたとき、「相手に実力を出させない」という戦い方が浮かび上がったのだと思うのです。
守りの戦術をとること自体は、責められるべきことではありません。勝負事は攻め一辺倒ではうまくいかないものです。
ただ、守るときは、攻めるとき以上に心の強さが試されます。攻め込むときは誰しも自然に気持ちが昂りますが、守りの戦いに入ると、ついつい気持ちも逃げてしまう。その瞬間、勝負の流れに思いがけない変化が生まれ、予想外の結果を招きます。守るときこそ、歯を食いしなって相手をぐいとにらみつけ、一歩も引かない気迫をみせねばなりません。
手堅さを追うあまり、石井はオリンピックの座を懸けた全日本選手権の決勝戦では、序盤にリードを奪った後、逃げに回り「警告」を受けた末に辛勝するなど、ハラハラさせたこともありました。だが、その後の約4か月間、自分の信じた戦い方に磨きをかけ、北京では堂々たる試合運びで優勝。あわやメダル1つの惨敗に終わりそうだった全日本柔道男子を崖っぷちから救ってくれました。
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K込柔道部は入学後に柔道を始めた生徒が多い素人集団ですが、何度も都大会ベスト8に入賞できました。その要因はいろいろあるのですが、今回のコラムのことを受ければ、「自分の実力を出し切ること」に重きを置いた練習をしているからだと思います。正直引き分けの練習はしないので、団体戦を2対3で負けることはしょっちゅうです。逆に3勝2敗も多いです。引き分けはあんまりないですね。
よく生徒に言うのが
無いものを作り出すのが練習
有るものを出し切るのが試合
なんだから、自分の得意技を出してこい。
それを返されたら相手が強かっただけの話だ。
試合は試し合う場、つまり練習したものを披露する場なんだよ
とも言いますね。
たぶん、そうやって伸び伸びと試合をしているから、奇跡の勝利を呼び込めるのかなって。まぁ、昔は毎日練習していたので、それなりに結果を出していましたけど、やはり小中と経験歴が長い人にはなかなか勝てないもので、その差を埋めるために、自分の長所を伸ばすことに特化していたな~と思います。

