今日はこの本のコラムから
2025年大学入試大改革: 求められる「学力」をどう身につけるか (1053;1053) (平凡社新書 1053)
- 作者: 清水 克彦
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2024/03/19
- メディア: 新書
<話せて書ければ人生は安泰>
2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏がこう語っていたことがある。
「実際に世の中を生きていくためには、『ソフトスキル』が重要です。まずはコミュニケーション能力、伝える力です」
たしかに、画期的な発見をしたとしても、コミュニケーション能力がなければ発信できない。つまり、話すことや書くことが重要と語っているのだ。
理系の研究者でさえそうなのだ。逆を言えば、話せて書けるという力は、文系理系を問わず、人生を好転させるうえで大きな武器になるということになる。
残念ながら、高校生の年代は部活動や塾で忙しく、保護者と会話する時間も無ければ、する気もないという子どもが多い。しかし、進路を決める時期になれば、何らかの相談をしてくる。そういう機会を利用し、保護者が子どもの趣味に合わせる形で関心を向けることで、少しずつ会話の機会を増やし、長さも増やして、その内容も段々と濃いものにしていただけたらと思う。
<『学歴不問』というウソ>
企業や団体の採用活動で、「学歴不問」を打ち出したり、ES=エントリーシートに大学名を書く欄を設けなかったりするところが増えている。ただ、実際には、面接で大学名を聞いたり、偏差値で中堅以下の大学の学生に、インターンシップや入社説明会の案内をしない企業や団体もあり、筆者は「学歴不問」などという言葉は絵空事、あくまで建前だと感じている。
何も国立大学でなくとも、国が実施する「高等学校等就学支援金制度」や東京都や大阪府が先鞭をつけた高校無償化により、高校授業料の家計負担が軽減される家庭であれば、子どもが望むなら、早慶やMARCH、関関同立クラスを、一般入試、あるいは学校推薦型入試か総合型選抜入試で狙わせてほしい。
マスメディアや大学教育の場で、「就活のリアル」を目の当たりにしてきた立場からすれば、基礎学力が乏しいと判断された大学の学生は採用されにくい。ある程度の大学に合格することは、子どもがどのような分野にも受け入れてもらえるチケットのようなものだ。ただ、AIが浸透する時代、新しいスキルを習得する「学習歴」も重要で、大学合格=ゴール、ではないことは忘れないでおきたい。
<親こそ失敗を恐れない>
大学で学生の就職活動の指導をする中で、「企業が書かせるES(エントリーシート)に多く出てくる」と感じたのが次の質問である。
「人生最大の挑戦は何ですか?」
「過去最大の失敗と、それをどう乗り越えてきたか書いてください」
といったものだ。同様の質問は、大学入試の総合型選抜入試でも、志望理由書や面接で問われることがある。
「高校生活で最も苦労したことは何ですか?」
「大学入学後、どのようなことに挑戦したいですか?」
就職活動や大学入試で問われるこれらの質問は、受験生本人のチャレンジ精神と苦難を乗り越える力、そして継続力や耐性を測るためのものだ。
ところが、今の子どもたちは、保護者が先回りしてサポートし、子どもから失敗体験を奪ってきたせいか、高校や塾で子どもたちを傷つかないよう、必要以上に丁寧な指導が行われ、ポジティブな言葉だけが投げかけられてきたせいか、ちょっとしたことまで投げ出したり、大学に出てこなくなったりするケースがあまりにも多い。
その結果、失敗経験が乏しく、失敗に対する免疫がないため、いざ失敗すると立ち直れないほどの痛手を負う若者が増加しているように思えてならない。
本書のテーマである大学入試で言えば、模試で失敗することもあれば、本番でミスを重ね、不合格になってしまうこともよくある。本番を控えた模試で悪い結果が出れば落ち込み、最初の大学入試で落ちてしまうと、次の入試への気力が萎えてしまうことだってある。
そんな場合、「別にどうってことない」と開き直ったり、「次こそ」と奮起したりする力があるかどうかは、社会に出てからも大きな差となる。
少しの失敗で立ち直れなくなる学生、成功しないと傷ついてしまう若者を見てきた筆者としては、それぞれの家庭で、子どもが高校生の間に「失敗力」を育てていただきたいと切に願う。
ーーーーーーーーーーー
タイトルは大学入試改革だが、これからは社会でどのような力が求められているか、今の若者に足りないモノなどを分かりやすく伝えてくれている。結局は大学入試も時代に合わせてマイナーチェンジを繰り返している。ただ、公平性を担保するためにどうしても暗記重視になってしまっているだけである。それは教員をしていて大学入試を指導するうえでよく思うことでもある。
その上で学歴重視なのも分かりやすい指標として用いることで会って決して悪いことではないと思う。だって、全員をまっさらな状態から評価するのってかなりの時間を要するよ。どうしても効率よく人を選抜したければ、ある程度のフィルタは欠かせないでしょ。
だから、日本から学歴が不要になるには、まだまだ、時間がかかると思う。たぶんAIに審査をさせれば楽なんだろうけど、まだそこまでAIを信用できないんじゃないかな。いや、人も信用できないんだけどね。
大事なのは成長する力であり、レジリエンスだと思う。そのために失敗は欠かせない。失敗は悪ではなく、成長する源である。

