食で身体に栄養を!
本で心に栄養を!与えよう!
ということで長田が好きな本の好きなコラムを紹介します。
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今回はコチラ。
- 作者: 西野 亮廣
- 出版社/メーカー: 主婦と生活社
- 発売日: 2016/08/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
僕らは戦争を無くすことはできない
「イジメやめようぜ」で「イジメが無くならなかったように、「戦争反対」と星の数ほど叫び続けてきたけど、やっぱり、戦争は無くならなくて、今日も世界のどこかで誰かが殺されて、誰かが泣いている。
皆戦争なんて無い世界を望んでいるのに、どういうわけか世界から戦争はなくならない。
これだけ叫んでも無くならないわけだ。もしかしたら、僕たちは戦争の無くし方を間違っていたんじゃね?イジメ問題同様、そんなことを考えてみる。
戦争を無くす方法は、デモにいく、政治家になる・・・など、いろいろ有るけれど、どの方法が効果的で、結局どれが一番正解なのかは正直よく分からない。
ただ、受け止めなきゃいけないのは、「戦争はなくならなかった」という事実。そう考えると、どの方法も応急処置で、癌を叩けていないような気もする。「戦争で儲けている人たちもいる」という話もきくし、実際のところ、どうなんだろ?
僕はお笑い芸人で、普段そういった問題とはかけ離れた場所で活動しているんだけれど、あるときタモリさんから「戦争の無くし方」を問われ、真剣に考えたことがあった。それは自身3作目となる絵本『オルゴールワールド』のストーリーを練っているときの話。
絵本『オルゴールワールド』の原案はタモリさん。
ストーリーを練っていた時期はタモリさんと何度も何度も呑みに行って議論を交わした。その議論のなかで「戦争が無くならない理由はなんだと思う?」とタモリさんが言った。
これまで、考えたことも無かったけど、一番最初に頭に浮かんだのは「軍需産業で儲けている人がいるから」という答え。ただ、そんな手垢でベタベタな答えを出して、タモリさんが、「なるほどな」と頷くわけもないことは百も承知で、素直にタモリさんの見解を訊いてみることにした。
「それはな、人間の中に『好き』という感情があるからだ。そんなものがあるから、好きなものを他人から奪ってしまう。また好きなものを奪った奴を憎んでしまう。ホラ、自分の恋人をレイプした奴を『殺したい』と思うだろ?
でも、恋人のことを好きじゃなかったら、攻撃に転じることはない。残念だけど、人間の中に『好き』という感情がある以上、この連鎖は止められないんだよ。
『LOVE&PEACE』という言葉あるけれど、LOVEさえなければPEACEなんだよ。その生き方は、限りなく動物や植物の世界に近いな。ただ、『好き』がない世界というのも、ツマラナイだろう?難しい問題だよ、これは。どうしたもんかね?」
背筋がゾクッとした。この言葉は僕の胸に深く刺さって、生まれて初めて「戦争」と真剣に向き合うこととなった。
どうやら、僕らは信じられないくらい残酷な仕組みの中に生きている。でも、僕らには知恵があって、問題が有る以上は必ず答えがあって、なにより、「システム上、戦争は無くならない」と断言してしまう結論はあまりにも寂しい。
そういえば、以前、テレビ番組で谷川俊太郎さんが「『戦争はなくならない』というところから考え始めたら、無くし方が見つかるかも」と言っていたな。タモリさんと同じ考えだった。
あの夜から、ずっと考えていた。分かりやすくするために規模をもう少し小さくして、友達関係のこと、親子関係のこと、ご近所関係のことから。
そして、数年後にようやく、『オルゴールワールド』という作品の中で僕なりの結論を出した。「なるほどな」とニコリと笑ってくださったタモリさんの顔を今でも鮮明に覚えている。
「僕らは戦争を無くすことはできないのかもしれないけど、止めることはできる」
答えは僕が子どものころから信じているエンターテイメント。
ピストルの引き金を引かなきゃいけない立場の人間でも、笑っているときや何かに感動している瞬間はひけない。引き金を引くのは、笑い終わった後や、感動し終わったあとだ。
つまり、エンターテイメントが世界中の人間を感動させている瞬間だけは平和で、「だったら、その時間をながくすれないいじゃん」というのが僕の結論。
いつだって、僕は自分のためにやっているんだけれど、そのことが巡り巡って、誰かの救いになっていたりすることがある。
その延長で、きわめて短い時間であろうと、争いを止めることができるなら、そもそもそういう目的で始めたわけじゃないんだけれど、作り手冥利に尽きる。
極上の棚ボタであり、エンタメを作る僕らの希望です。
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