忘己利他

働く幸せ~仕事でいちばん大切なこと~

働く幸せ~仕事でいちばん大切なこと~

  • 作者: 大山 泰弘
  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2009/07/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

民主党政権になったときに最初に就いた鳩山由紀夫首相は所信表明演説でこのような話をしていた。

『・・・中略・・・
先日、訪問させていただいたあるチョーク工場のお話を申し上げます。創業者である社長は、昭和34年の秋に、近所の養護学校の先生から頼まれて2人の卒業生を仮採用しました。毎日昼食のベルが鳴っても仕事をやめない2人に、女性工員たちは「彼女たちは私たちの娘みたいなもの。私たちが面倒みるから就職させてやってください」と懇願したそうです。そして、次の年も、また次の年も、養護学校からの採用が続きました。ある年、とある会でお寺のご住職が、その社長の隣に座られました。社長はご住職に質問しました。「文字も数も読めない子どもたちです。施設にいた方がきっと幸せなのに、なぜ満員電車に揺られながら毎日遅れもせずに来て、一生懸命働くのでしょう?」

ご住職はこうおっしゃったそうです。

「ものやお金があれば幸せだと思いますか」。

続いて、

「人間の究極の幸せは4つです。愛されること、ほめられること、役に立つこと、必要とされること。働くことによって愛以外の三つの幸せが得られるのです」。 とおっしゃいました。

「その愛も一生懸命働くことによって得られるものだと思う」、

これは社長の実体験を踏まえた感想です。 このチョーク工場は、従業員のうち7割が「障がい」という「試練」を与えられた、いわば「チャレンジド」の方々によって構成されていますが、粉の飛びにくい、いわゆるダストレスチョークでは、全国的に有名なリーディングカンパニーになっているそうです。障がいを持った方たちも、あるいは高齢者も、難病の患者さんも、人間は、人に評価され、感謝され、必要とされてこそ幸せを感じるということを、この逸話は物語っているのではないでしょうか。
・・・中略・・・』

このチョーク会社は日本理化学工業という名前で、私は去年「日本で一番大切にしたい会社」(坂本光司:あさ出版)を読んで知りました。実は鳩山首相もこの本を読んで、所信表明演説の1週間前にわざわざ日本理化学工業を訪問したそうです。

この日本理化学工業の大山泰弘社長と住職の話はこの本にも載っています。そしてその続きに、「その4つの幸せの中の3つは、働くことを通じて、実現できる幸せなんです。だから、どんな障がい者の方でも、働きたいという気持ちがあるんですよ。施設の中でのんびり楽しく、自宅でのんびり楽しく、テレビだけ見るのが幸せではないんです。真の幸せは働くことなんです。」

と書いてあります。また、それと同時期に上野動物園の飼育係をしていた(その後東武動物公園のカバ園長として親しまれた)西山登志雄さんがテレビで「最近の動物園の動物は、自分の子どもを育てないのです。どうしてだろうと考えてみたのですが、どうやらオリの中でエサを与えられていると、子どもを育てるという本能を見失ってしまうようです。」

ということを語っているのを見て、大山社長は「人間にとって“生きる”とは、必要とされて働き、それによって自分で稼いで自立することなんだ」ということに気づき、その後も日本理化学工業は積極的に障がい者を雇用し続けているそうです。

これらやカンブリア宮殿というTV番組で取り上げられて知名度があがったからか、今度は大山泰弘会長自ら執筆した「働く幸せ」(WAVE出版)が発売されました。この本には先に書かれた内容以外にも、大山会長が父親から会社を継ぐまでの話や、障がい者とどのように仕事を行ったかが書かれています。その創意工夫は目から鱗のものばかりで、その工夫がホタテ貝殻を利用したエコなチョークや粉の全くでないキットパスの開発に繋がっていきました。

これらの本を読んだとき、私は駒込学園が使用しているチョークが何かを確認した。そして、日本理化学工業のチョークを使っていることに安堵しました。

“働くこととは何か”、この命題の答えは非常に難しいです。“生きていく上でお金を獲得するためなのか”、“家族を養うためなのか”解答は人それぞれだと思います。

私はいまだその解を持ち合わせていませんが、1つだけ分かったことがあります。私は教師をしていて幸せであるということです。ぜひ、これらの本を読んで働くことの意義を考えるキッカケとなれば幸いです。

このあと、こんな本も発売された是非一度手に取ってみてください。

利他のすすめ~チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵

利他のすすめ~チョーク工場で学んだ幸せに生きる18の知恵

  • 作者: 大山泰弘
  • 出版社/メーカー: WAVE出版
  • 発売日: 2011/04/22
  • メディア: 単行本

駒込高校の入口にある最澄上人の像にも刻まれている
“忘己利他”「己を忘れて他を利するは慈悲の極みなり」
この言葉を、本が教えてくれます。

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