なつみ。5

落ち着く匂い

 

私の部屋には、常にバスケットボールが転がっている、前はきちんとケースに入れていたが、そのケースも今となっては空っぽのまま閉まってある。そのようになったのは、ボールを抱いたまま寝てしまうようになったからである。

私はボールの匂いをかぐとものすごく落ち着き、そのまま寝てしまうことがよくある。皮の匂いなのだろうか、それだけではない気がするが、この独特な匂いがとてもいい。私は勝手にバスケをやっている人はこの匂いが好きなものだと思い込んでいたが、同意を求めたところみんな首を傾げるばかりで理解してもらえなかった。

プロの選手がシュートを打つときに、ボールの匂いを感じながら打っているという話を聞いたことがある。おそらく、落ち着いて打てるのではないかと思うが、残念ながら私はシュート時の匂いなどわからない。

以前読んだバスケのスキルアップの為の本に、「ボールと一緒に寝てボールと友達になろう」と書いてあった。意識しているわけではないが、私はもうクリアできていると思う。時々ボールを持って寝たはずなのに、朝起きるととても落っこちたとは思えない遠いところにボールが落ちていることがある。夢の中でバスケをしているのだろうか。

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