- 作者: 坂東 眞理子
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2007/12/15
- メディア: 新書
「学校では秀才だったのに、実社会に出てあまり成功しなかった人はたくさんいます。
本を読み、知識を身につけ、入学試験や資格試験には強くても、仕事ができないという人は、どうやら人と協力して物事を成し遂げるのが苦手なようです。
(中略)
では、どうしたらチームで働く基礎的な知恵を身につけることができるのでしょう。
じつは、その答えは女性が職場進出できるようになるための方法と同じなのです。
アメリカでは女性の職場進出が日本より約二十年早く始まりましたが
日本同様、経営管理職に就く女性の少ない時期が続きました。
その原因をいろいろな学者が研究しました。
ベティ・ハラガンは、『母が教えてくれなかったゲーム』(WAVE出版)という本のなかで、
男性は若いときから野球やサッカーなどでチームで勝負を争うスポーツに親しんで、
チームプレイヤーとしての行動を身につけているが、
女性はままごとやお人形遊びのように、好きな友だちと仲良く過ごす遊びをしていると
指摘しています。
男性は幼いときからチームで行うスポーツを通じて、
人柄は嫌いでも上手にプレーできる仲間と組まなければ勝負には勝てない、
チームが勝つためには自分の役割を果たすことが重要である。
個人プレーをしてはいけない、
試合で負けてもすべてを失うわけではなく負けから学ぶこともたくさんある、
勝つのも時の運だから有頂天にならないなど、
仕事の仕方を学んでいるというわけです。
それが、社会で仕事をする際に役に立っているのです。」
近頃は男性もTVゲームなど個人で楽しむことも増えてきています。
ニートなどの引きこもりが一番多い世代は
ファミコンが発売されたとき小学生だった40代前半です。
まさに時代が適合しているのです。
これを読むたびに
学校や地域のクラブ活動こそが協調性を育める数少ない組織だと実感します。
もちろんクラスの活動もその一役を担っています。
この本を読んでから
私は柔道部の部員を仮入部などの短期間しか在籍していない部員を除いて
簡単に辞めさせないようにしています。
今までは先生に覚悟を決めて辞めると言いに来ているのを止めるのは
申し訳ないと思っていました。
しかし、柔道部を辞めたからといって駒込生であることに変わりはありません。
ならば、駒込の生徒として将来社会に出たときに困らないようにするのも
教師の仕事ではないかと思うようになりました。
クラブは失敗が許されるチームです。
入部から始まり、基礎の練習、縦の人間関係、実践練習、本番、反省と
短期間で一つのテーマをこなせる場です。
もちろん練習は大変だろうし、人間関係で傷つくこともあるでしょうが、
それ以上に達成感や仲間の大切さを確認できる場でもあります。
なによりもやり直しが利くし、何度もチャレンジできる機会があるのが
クラブの利点だと思っています。
社会の厳しさに比べればクラブ活動の厳しさなんて・・・
そのような場だからこそ、個人の性格も垣間見ることができます。
クラブ中に好きなことしかしない子どもは、学習でも好きなことしかしません。
練習でも先生の話を真面目に聞ける生徒は
家庭でも親の言うことをきちんと聞いて行動できます。
試合中にマイナスイメージを持ち続けて切り替えられない生徒は
日常でもマイナスイメージをもって行動しています。
結局はどのような行動をしても心は常に変わりません。
ここ最近柔道部員を観察していて気づいたのですが、
柔道で好成績を残した学年は、学業でも好成績を残しています。
現在は家庭においても少子化、子ども部屋、スマホの普及などによって
一人で生活する場所が増えてきました。
しかし、社会は決して一人では生きていける場所ではありません。
今一度クラブ活動の意義を見直して、
多くの生徒がクラブ活動に参加し、お互いに励ましあい、
健全な精神を養ってほしいと思います。
クラブは色々な人が集まった集団です。
そのなかでコミュニケーションを図り人間関係を学び
その中で個人が自分の役割を果たせば組織へと変わっていきます。
この過程こそがクラブ活動における一番の醍醐味ではないでしょうか。
たぶん、そういうのが楽しくて長田は教員をしているのだと思います。
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