ともよ。3

夜のピクニック

みんなで、夜歩く。たったそれだけのことが、こんなにも特別なんだろうね。杏奈の言葉が常に過る。貴子と同じで、ずっと意識していた。物語冒頭に、貴子と融の関係が明らかになる。驚きと共に次が気になった。しかし、気になるよりも、不安やもどかしさ、苛立ちの気持ちが強くなった。同じ学校で、同じ時間を過ごしてきた2人が、この歩行祭で急に交わり始めたとき、近くにいるはずなのに、縮まることのない関係に苛立ちも覚えた。同時に、もどかしい気持ちも感じた。2人の関係が分かっているからこそ、時間が過ぎるにつれて貴子よりも焦っている私がいた。

 読み出すにつれ、時間が早く経つように感じた。まるで、私も歩行祭に参加している気分だった。友達の話や恋愛の話、将来の話、うわさ話、たくさんの話が体が疲れていくなか、流れるように会話されている。私もあると頷いてしまう話ばかりだ。同じ高校生として彼らの気持ちにとても同調する。今だから言い合える、そんなことがたくさんあった。

 私の一番の好きなシーンがある。貴子と融が缶コーヒーで乾杯するところだ。互いの顔が見えない中のシーンだが、2人の関係が一気に変化していく。私はなんだか温かい気持ちになり、苛立ちや不安は消えていた。貴子の賭けが明からになる場面でもある。私は自然と貴子を応援していた。どうしても、2人だけで、過去について話して、互いの気持ちを伝え合ってほしいと思った。杏奈や美和子の気持ちが手に取るようにわかった。友達のいてくれる存在がどんなに大きなものか、友達への感謝がこみ上げた。

それぞれの思いで望む歩行祭。私も参加してみたくなった。ただ歩くだけのことが、どう特別で、どんなに尊いものか感じたくなった。貴子の勇気と杏奈の愛情と、さまざまな人の気持ちが、この一冊に詰まっていた。最後に貴子が呟く。何かの終わりはいつだって何かの始まりなのだ。いい言葉だと思う。

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