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今月はコチラです!
免疫力 – 正しく知って、正しく整える – (ワニブックスPLUS新書)
- 作者: 藤田 紘一郎
- 出版社/メーカー: ワニブックス
- 発売日: 2020/06/09
- メディア: 新書
アレルギーの予防にも、自然免疫の力が重要
「感染症を防ぐには、身の回りの微生物とほどほどに仲良くすること」
この一文だけを見れば、よほど免疫に詳しい人でない限り、矛盾を感じることでしょう。感染症を起こすのは微生物なのですから、身の回りの微生物を排除すれば、感染症を防げるだろうと考えてしまうところです。
しかし、自然免疫の強化の成り立ちを知れば、それがいかに短絡的で、間違った考えかよく分かります。繰り返しますが、私たちの自然免疫は、微生物と共存することで強くなります。反対に、生物が身体に侵入してこない環境では強くは育たないのです。
今、欧米では「衛生環境仮説」を支持する報告が増加しています。理由は、先進国でアレルギー疾患の患者の急激な増加と重症化が深刻な問題となっているためです。アレルギー疾患も免疫力の低下によって起こる病気です。その原因は乳幼児期の感染機会の現象にあるというのが、衛生環境仮説です。
先進国では環境が清潔となり、微生物と接する機会が少なくなりました。また抗生物質の使用頻度が増加したため、乳幼児期の感染機会が著しく減っています。それと反比例するように、アレルギー疾患が急増してことが注目されているのです。
様々な微生物との感染が、自然免疫の細胞たちの働きを活性化します。それが、あとに続く獲得免疫の反応の方向性を決めることになるのです。獲得免疫は、免疫の後方部隊であり、病気を治すために強い力を発揮します。それがときに、自らの細胞を傷つけ、炎症を悪化させ、病気を重くしてしまうことがあります。獲得免疫は、病気を治すけれども、悪化させてしまうこともある、まさに諸刃の剣なのです。
この難しい獲得免疫を良い方向に働かせるのが、自然免疫です。自然免疫がしっかり発達していて、異物を排除する力に優れていれば、獲得免疫はどっしり後方に控えているだけですみます。たとえ強力な敵が入ってきて獲得免疫の出番が来たとしても、過度の反応を起こすことはないのです。
ところが、乳幼児期の感染機会が減少すると、自然免疫の発達が阻害され、強くは育ちません。結果、獲得免疫の反応が過度に活性化されたり、バランスを崩したりします。それによって、人体になんの害もなさない異物にまで、獲得免疫が攻撃を激しく加えるようになります。その異物がアレルゲンであり、アレルギー疾患はこうして起こってくると考えられているのです。
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