免疫力。8

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免疫力 - 正しく知って、正しく整える - (ワニブックスPLUS新書)

免疫力 – 正しく知って、正しく整える – (ワニブックスPLUS新書)

  • 作者: 藤田 紘一郎
  • 出版社/メーカー: ワニブックス
  • 発売日: 2020/06/09
  • メディア: 新書

 

新たな感染症は文明社会の隠されたリスク

2002年に中国で流行した「重症性呼吸器症候群(サーズ)」の病原体は、もとはコウモリのコロナウイルスでした。2012年にサウジアラビアで流行した「中東呼吸器症候群(マーズ)」はヒトコブラクダのコロナウイルスが原因です。

今回の新型コロナウイルスも何らかの野生動物、現時点でははっきり分かっていませんが、おそらくコウモリのウイルスだろうと見られています。人に恐ろしい思いをさせるこれらの新型ウイルスも、終宿主となる生物の体内にいるときにはおとなしく、ひっそりと暮らしています。

 

ところが、それを人が誤って取り込んでしまうと、大変な感染症を引き起こすことになります。私たちにとっては恐ろしい出来事となりますが、新種の病原体が人間社会を襲うことは、今後も起きると考えておいたほうがよいと、私は思います。人間が効率重視の文明的な暮らしを続ける限り、このリスクと隣り合わせで生きていくことになるからです。

 

それは、地球の歴史を見るとよくわかります。

 

今から約40億年前、誕生からおよそ6億年が過ぎた原始地球の表面は、小天体が落下して爆発が起こっていました。また、海底火山が噴火し、上空では雷鳴がとどろいていました。これらのエネルギーを使って生じてきたのが、アミノ酸や糖、核酸塩基などの生命の素材です。それらが海の中で複雑に組織化され、生命の誕生にいたりました。

 

この地球の46億年の歴史を1年というカレンダーにまとめてお話したいと思います。

 

地球誕生の日を1月1日とすると、最初の生命となる微生物の誕生は3月25日、海中の生物が陸に上がったのが11月20日です。では人類の登場はいつでしょうか。それは、12月31日の午後2時30分となるのです。この地球上でまだ9時間30分しかいない人類こそ「新種」であり、地球はもともと微生物のものだったでのす。

 

こうして見れば、「地球は人類のために存在する」という考え方が間違っていることが分かります。人類よりはるか以前に地球にすみついていた微生物は、地球のいたるところ、またあらゆる生物の体内に存在しています。

 

なかでも熱帯雨林は彼らの絶好の住処となっていて、とくにウイルスにとっては世代交代がもっともスムーズに行える場所です。熱帯雨林では、約3600種ものウイルスが確認されています。それらのウイルスは各自、熱帯雨林の中で、豊富に存在する野生動物を宿主として、世代交代を自然に続けています。

 

それを壊してしまったのが、人間でした。人間は熱帯雨林に入り込み、どんどん開発を行っていきました。それに伴い、人間は道の自然環境に身を置き、未知の動物を接触し、ときにそれを食べるようにもなりました。結果、自然界の動物を本来の宿主としているウイルスに襲撃されるようになったのです。

 

ウイルスが新しい宿主に出会うと、猛烈な攻撃をします。これが新しいウイルスが人を殺してしまう理由なのです。

 

自然界の動物だけで形成されていた微生物の感染サイクルが、人間の行う開発によって行き場を失った動物たちとともに人間社会に入ってきました。世界は今、グローバル化が進み、人もものも自由に動くように発展しています。人が動けば、微生物も動きます。土地の開発は人が豊かに便利に生きる上でやむを得ないこととされています。となれば、人間が未知の微生物と出会うのは防ぎようのないことになるのです。

 

しかも、地球温暖化が急速に進む中、自然界でおとなしくしていた微生物が、活動を始めるだろうという危険性にも、今、人間はさらされています。日本の川や海の底には、生きて代謝機能を維持しているが、培養できない状態の最近、すなわち潜在菌がわんさかいることが分かっています。そのなかには、かつて日本人の多くを殺したコレラ菌もいます。そうした潜在菌が、地球温暖化によって、だんだんと目覚めつつあるのです。

 

 

 

 

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