マインドセット

今月の3の日もこの本のコラムです。

俺しかいない【Kindle限定版】 (WPB eBooks)

俺しかいない【Kindle限定版】 (WPB eBooks)

  • 作者: 堂安律
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2023/03/23
  • メディア: Kindle版

マインドセット

緊張しすぎるのはよくないけど、適度な緊張感がなければ熱くもなれない。冷静だけど、熱く。そのバランスが大事。

人生でゾーンに入ったのは2回だけ。2018年10月のウルグアイ戦で決めた日本代表初ゴールのシーン。そしてカタールW杯のドイツ戦で決めた同点弾のシーン。その状態を意図的に作り出せないかと考えて、いろいろな人に話を聞いたけど、ゾーンはなかなか自分でコントロールできないものだとわかった。でも、ゾーンの前のフローの状態なら自分で操ることができる。そのためには、しっかりマインドセットする必要がある。

その感覚を掴めるようになったのは、カタールW杯の前、2022年6月に行われたキリンチャレンジカップ・パラグアイ戦だった。その直前の3月、俺はW杯最終予選のメンバーから落選した。メディアやネットでいろいろな憶測を飛ばされたこともあり、「今日ダメだったら、W杯には絶対に行けない」というすさまじいプレッシャーを感じていた。

人生でいちばん緊張した試合だったともう。所属クラブや日本代表で、ここぞという試合を何度も経験してきたけど、パラグアイ戦の緊張感は今まで味わったことのない独特のものだった。「ここで結果を出さないと生き残れない」「オレのサッカー人生を左右する試合になる」という予感があった。まさに極限状態だった。

 

そんな運命の一戦でも、もう心に迷いがなかった。この試合をきっかけに、「どんあ試合でも俺はベストパフォーマンスを出し切れる!」という自信がついた。表面的な自信ではなく、確信に近かった。それはつまり、ゾーンの前のフロー状態をしっかりとマインドセットできるようになったということ。

冷静だけど、熱く。そのために、あえて自分を緊張させるー。一見、矛盾しているようにも思えるかもしれないけど、これが俺なりに導き出したベストなマインドセットだ。

試合が始まる前にピッチに立ち、満員の観客の前でゴールを決めている姿をリアルにイメージする。心拍数がどんどん上がり、全身に血が巡って来る。そして、対戦相手に対する闘争心をむき出しにし、「絶対に目の前の相手を上回ってやる」「マッチアップする相手を前半で交代させてやる」と心に火をつけ、ハングリー精神を高めて試合に向かう。俺は相手にイライラしたときほどパフォーマンスが良くなるから、その状態を意図的に作り出す必要がある。

 

緊張しすぎるのはよくないけど、適度な緊張感がなければいいプレーはできない。冷静だけど熱く。そのバランスが大事なんだ。以前の俺はメンタルの事を誤解していた。根性やハートの問題だと思っていたけど、そうじゃない。メンタルは脳の問題だった。どんな状況でも自分の脳をコントロールし、ベストパフォーマンスを安定して出せるかどうか。

カタールW杯は心身ともに充実していた。でも、まだ波はある。これからさらに、この感覚を研ぎ澄ましていくことで、選手としてさらにレベルアップできるはずだ。

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